格ツク最強理論


「いっしょうけんめい やったのに」
紹介ゲーム:Wonderful World
 ゲームバランスの良し悪しについて考えてみたいと思います。よく巷で「ゲームバランスが悪い」とか「このキャラの技は調整不足だ!」などといったゲームバランス関係の話を耳にします。単純にほぼ全ての面において他キャラより優れていたり、また強力な連携や無限コンボなどが発見されたりして、勝つためにそういったいわゆる「強キャラ」だけが対戦台で暴れまわっている様を見ていると、そう言いたくなる気持ちもわからないではありません。

では反対に「どのキャラの強さも横一線」のゲームバランスがベストなのか、と聞かれるとどうでしょう。以前は自分もどのキャラも完全に五分の強さで、同レベルのプレイヤーが使えば勝率はほぼ横一線のゲームバランスがベストだと信じていました。ですがキャラ個性を残したまま全キャラの強さをそろえるのは至難の技ですし、だからといってバランスを重視するあまりキャラの特性を少しずつ削っていってしまうと、結局どのキャラでもやることが一緒になってしまうという結果を生むことにもなりかねません。キャラの特性を削っていくということはバランスの調整には有益かもしれませんが、それが面白さに直結するとは限りません。ゆえに今、自分は「どのキャラの強さも横一線」のバランスもありだと思うけれどもそれが全てではない、と思うようになりました。多少各キャラの強さに差があったとしても、そのバランス調整がもしも面白さに直結するものだとするならば、その差はゲームバランスの「悪さ」ではなく「偏り」として受け入れられてもいいのではないかなと思うのです。

今回取り上げた「Wonderful World」にはアイウェンというキャラクターがいます。このキャラは他のキャラに比べ、コンボが非常に繋がりやすく連続技を作りやすい反面、攻撃力、防御力がかなり低く設定されています。攻撃力が低いということは相手を倒すまでにかなりの攻撃を浴びせねばならず、防御力が弱いということは他のキャラより少ない攻撃で倒されてしまうことを意味します。20ヒットオーバーの超絶コンボで与えたダメージを、事故で当たったカウンターヒットからの3〜5ヒットで追いつかれてしまうということも日常茶飯事で、正直なところコンボが100%安定できる上級者でない限りは、同レベルの対人戦でアイウェンを使用して勝つのは難しいのではないかと思います。しかしながら、それではアイウェンが全く使われないキャラかというとそうではありません。自由自在に動ける機動力、長くコンボを繋げられる爽快感など、「強さ」とは別次元の「面白さ」を持っているからです。対戦でも動けるだけ動き、繋げるだけ繋いで、結果として負けてしまっても後には気持ちよく戦えたという楽しさが残ります。3段ジャンプからのコンボを決めても相手の超技一発で逆転負け、と いった状況では思わず「いっしょうけんめい やったのに」と言ってしまいますが、口ではそういっていながらも心の中ではある種の満足感を感じているのです。

「Wonderful World」には、この他にも布石技が強力なデュナ、飛び道具系が強力なササリなど、個性豊かなキャラが登場しています。一人一人のキャラが強力な個性を持っていると、バランスの調整が難しく「○○一強」といった状況が生まれやすいと思われますが、不思議と本作にはそういったものが感じられません、というよりそもそもバランスの良し悪しを探ろうという気も起きないというのが正直なところです。どのキャラを使ってもキャラ独自の戦法があり、勝ち負け関係無しに「面白さ」を持っているからだと思います。「勝つ」ためにキャラを選ぶのではなく「楽しむ」ためにキャラを選ぶ。ゲームは「楽しむ」ために遊ぶものという考えに立ち返らせてくれた作品です。現在はまだ制作途中ということでキャラは5人ですが、キャラクターセレクト画面の枠を見る限りまだまだこれで全員ではないことが容易に予想できます。キャラ数がどこまで増えるのか、また新キャラにはどれだけの個性が詰め込まれるのか、期待して待ちたいところです。

「勝つ」よりも「楽しむ」遊び方。アーケードゲームでは勝ち負けが使う金額に関わるから…とこの遊び方を敬遠している方々もいると思います(自分もそうです)。そこで無料で何度負けても好きなだけ対戦できるという格ツク作品のメリットを活かし、本作でこういった遊び方を経験してみてはいかがでしょうか。
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