※これは「ゲーム制作者が自由な記事を作るアドベントカレンダー2021」12/19の記事です。

「『集団制作は9割上手くいかない』は真実か?」
「経験として一回やってみたら良いと思う。9割上手くいかないから」
集団制作についての議論をしている中で出てきた上記の言葉が今も頭から離れない自分がいます。
「そんな事はない。共同制作ってやり方次第で、実はそこまで難しいものでも怖いものでもないんだよ」
そう伝えたいがために、2019年に「ツクシティ」、2020年に「ユニバーサル・ツクール・ジャパン」、
そして今年2021年は「ツクールメモリア」を企画し、完成まで辿り着くことができました。
さすがに3回連続「9割上手くいかないうちの残りの1割に入った」とは考えにくい事からも
これで少しはその「やり方次第でできる」ことの証明になったのではないかと思っています。

という訳で、今回はそのやり方について、自分が心がけたことを書かせていただければと思います。
もちろんこれが最適なやり方ではないかもしれないし、他にもっといいやり方も沢山あると思いますが、
「やってみたいな、でも怖いな」と思っている方の参考に少しでもしていただけたら幸いです。

1.集団制作には2タイプある。
2.情報共有場所は「見える場所」そして「多すぎない」
3.制作期間は長くてもいい。でも更新はマメに。
4.基本は「無難にまとめる」
5.基本は「明るく楽しく!」『遊び』の範疇は出ない。。
6.主宰は参加者より無能で構わない。
7.基本的に「お金」は絡めない
8.終わりに。

1.集団制作には2タイプある
「役割分担型」と「キャラ・アイデア提供型」の違い
一口に集団制作と言っても、その形態から大きく2つに分けられると思っています。
本当はもっと細かく分けることも出来るのでしょうが今回は分かりやすさ重視で2つに分けます。

1つ目は「役割分担型」。シナリオはAさん、キャラデザインはBさん、サウンドはCさん…、
という感じで、それぞれの方が1つ以上の役割を引き受けるパターン。企業で作るチームなどは
ほとんどがこの形なのかなと思っています。もう1つは「キャラ・アイデア提供型」。自分の作品は
全てこのスタイルで作っていて、基本的なゲーム部分は主宰が全て作り、他の参加者さんはそこに
キャラクターやイベントアイデアを提供するというスタイルで参加していただきます。
どちらが完成させやすいかと言われれば、自分は間違いなく「キャラ・アイデア提供型」を推します。
理由は大きく3点。

まずは「参加者さんの参加の敷居が低い」こと。1アイデア・1キャラから参加が可能なので極端な話、
ゲーム制作初心者さんでも、時間の都合で深く参加できない方でも気軽に参加が可能になっています。

次に「途中でのメンバー加入・離脱で事故が置きにくい」こと。役割分担型で、例えばサウンド担当さんとか、
シナリオ担当さんが抜けたり(または途中加入したり)するとその調整はかなり大変かと思われます。
もちろんキャラ・アイデア提供型でも途中での離脱は結構困るのですが、基本的な部分を主宰が作っているので
「事故」と呼ばれるほどの大惨事になる可能性は低いです。また、途中加入の方が比較的すんなりと
入れるのも大きなメリットです。

そして3つ目。ある意味最大の要素と言えるのが「出来た作品がすごく魅力的に見える」こと。
恐らくこれは自分だけではないと思います。市販作品でも「大乱闘スマッシュブラザーズ」
「ザ・キングオブファイターズ」などに代表される、様々な作品のキャラクターが一同に介して
1ゲームに参加する作品に自分はすごく魅力を感じます。こういうものを作りたい、というのがすごくある。
このモチベーションの高さこそが自分がこういう作品を作り続ける、企画を立ち上げ続ける、
そしてそういう企画がドンドン出て来てほしいと願う理由です。

以降の項目でも、この「キャラ・アイデア提供型」を前提に話を進めていきます。
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2.情報共有場所は「見える場所」そして「多すぎない」
広げ過ぎるとその分、把握が大変。参加者さんが把握できる範囲で。
最初に紹介したコラボ作品3つは全て「ツクール公式フォーラム」で企画させていただきました。
そして基本的には完成まで、一部Twitterやギガファイル便、公開場所としてRPGアツマールを使いましたが、
最後までフォーラム内で完結するように心がけました。

より効率的にという事で外部のサイトを勧められたこともあるのですが、個人的には
情報共有の場所を多く持つのはあまり良いとは思いません。
TwitterやDiscordにしてもやっていない人もいる。新たに導入するにも手間がかかるし、慣れるまでとなれば
さらに多くの手間と時間がかかる。それよりか、1つの場所で集めた企画なら、その1つの場所で
可能な限り話を進め、できれば完結出来るのがベストなのかな…と考えています。
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3.制作期間は長くてもいい。でも更新はマメに。
「動いている所を見せる」「実際に動かしてもらう」は超重要
仕事の都合や自分のスケジュール変更など、ツクール以外の要因も絡むので「絶対」は無理がありますが、
参加者さんを不安にさせないためにも定期的な更新は重要と考えます。なるべく早く、なるべく多く。

毎日はさすがに無理がありますが、自分は1週間に1回の更新を心がけました。
可能であれば、少しでもいいのでゲーム内容を更新し「制作が動いているよ」というサインが出せれば
より良いと思います。無理なら画像や動画等での制作状況紹介でもいいのですが、とにかく
「進んでいるよ」ということのアピールは重要。この期間が長くなるほど参加者さんも不安になりますし、
不安はモチベーションを低下させます。
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4.基本は「無難にまとめる」
特にプラグイン周りや、極端なキャラ性能には要注意。
これはどちらかというと参加者さんにも心がけていただきたい所でもあるのですが、
基本的には「無難にまとめる」を心がけています。どういうことかというと
「多少込み入ったシステムでもプラグインを使えばできる」要素をどうするか、といった具合。

近年のRPGツクールではプラグインの導入により、かなり込み入ったシステムを入れることができるように
なりましたが、自分自身の不勉強もあって、全てに対応しきれていないのが正直なところです。
「このプラグインを導入することで実現可能だよ」と持ってきてもらえるとありがたいのですが、それも
さらに別の参加者さんが持ち込んだプラグインとの競合が起きたり、また「AさんがOKなら自分も」
という感じでBさんもCさんもDさんも、つまり我も我もと独自システムを持ち込まれると収拾が
付かない事態になってしまう事もありがちです。なので「プラグイン無しで導入できるシステムを基本とし、
プラグインが必要なシステムに関しては厳選させていただく」ことを心がけました。
採用するものと見送るものがどうしても出てきてしまう関係上、多少の不平等は起こり得るのですが、
そこは円滑に制作を進めゲームバランスを破綻させないために必要な事として納得していただきました。

そこに納得できることも、参加者さんに求められる要素かと思っています。
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5.基本は「明るく楽しく!」『遊び』の範疇は出ない。
色々あっても完成したらノーサイド。「あの時は大変だったね〜」的な笑い話で!
自分自身「ツクールは遊び」と割り切っているので、その範疇は出ない、出てはいけないと思っています。
完成したゲームそのものだけでなく、ゲーム制作そのものを楽しく遊ぶ。色々あって、その瞬間は悩んでも
完成したらそれはノーサイド。大変だったけど楽しかったね、と言えるものを目指していて、
結果としてそれがいい作品に繋がるんじゃないかなと思っています。
「ゲーム制作は遊びじゃない」と言う方もいらっしゃるし、それが間違いだとは思わないのですが、
でも「ゲーム制作は遊び」と言う権利だってあっていい。せっかくの「遊び」だからこそ高められる
モチベーションもあると思っています。「遊び」は大切にしたい。

時効だと思うのでお話しさせていただけるなら、企画中に音信不通になった方とか、「これが最後の修正」
からの再修正(実際には再々々修正まで行った)とか、伸ばしに伸ばした〆切が過ぎて、もうこちらで作る、
と見切り発車した時を目掛けての素材提供とか、「この種のモンスターを敵として出すのは耐えられないから
出さないで!」という要望が来て慌てて差し替えたりとか、実は結構色々あったのも事実です。
でも完成したらそれも「ま、いっか。そんなこともあったね」でネタにできるかな…と思っています。
(主宰としてはそれじゃダメなのかもしれませんが)
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6.主宰は参加者より無能で構わない。
実は重要なのは「参加者さんがわきまえて下さっているか」にあると思うのです。
3作連続で完成に辿り着けたのは、実は参加者さんによるところが大きいと思います。
自分自身、特に才能という観点に関してはゲーム制作者の中でも地獄(底辺より下という意味で)の
レベルと考えています。そんな主宰が何故完成できたのか。ここまで書いて来たやり方ももちろんですが、
もう1つ大きいのが参加者さんの部分。素晴らしい参加者さんに恵まれたと毎回思っております。

…というのも、残念ながら頓挫してしまった共同企画の中には、原因が主宰よりも参加者さんにあるのでは?
と思うケースもいくつか見られるからです。基本的に共同制作において主宰は監督です。
監督がAで行くと言ったら、基本的に答えはYESしかない「はず」です。そこを参加者さんが妙に勘違いして
別のアイデアを提供したり、必要以上に反論したりすると事態がややこしくなります。
(もちろんメンバーの気持ちを無視した主宰の独断の決定、理不尽な采配に対しては別としても)

どの企画においても、基本的に自分の思うように作らせていただけた事が何より大きかったですし、
自分自身、参加者として企画に参加するときにはその「わきまえる」ことは強く意識しています。
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7.基本的に「お金」は絡めない
お金は重い。気軽さと相反するもの。
共同企画において自分は有償依頼をしたことはありません。

自分がお金に対して臆病というのが一番大きな理由ですが、他の企画を見ていると入金や金額の関係で
シャレにならない事態に発展していることがそこそこ見られるのもまた事実。上記の「明るく楽しく」も
お金を絡めてしまうと一気に窮屈になってしまうのではないかと思っています。お金を絡めることで
責任をもって取り組んでくれるかも…という考え方もあるにはあると思うのですが、やっぱり自分は
気軽に、できれば責任という言葉とは無縁の感覚で作りたいというのがあります。
そしてそれは決して無理ではないし、それでも結構なクオリティの作品は作れると思っています。
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8.おわりに。
「共同制作は難しくない」は未だ道半ば、そして…。
まとまらない長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

「共同制作って、実はそこまで難しくないんだよ」ということを伝えたい一心で書いた記事で、
冒頭で「3作連続で完成させたことがその証明」とは書かせていただいたものの、
それでも「ダメだね、共同制作は難しい。そこは揺るがないよ」と返されれば、それを払拭できる
自信は、自分にはまだありません。ではどうすればいいか。自分の考える結論としては、
「とにかくまた作る」ことしかできないんじゃないのかな…と。こういう作品と姿勢を見せ続け、
また魅せ続けることで「あ、もしかしたら出来るのかもね」「自分もやってみようかな」という
方が増えていただけたら幸いに感じます。

2022年も、コラボ屋は走ります。
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今回の記事で扱った、完成に至ったコラボ作品です。よろしければぜひプレイしてみてください。
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