格ツク最強理論


「跳べないキャラはただのキャラ!?」
紹介ゲーム:ぶれいかぁずすぺしゃる
 格闘ゲームにおける基本操作について考えてみます。ここで言う基本操作とは、しゃがみ、前・後歩き、ガード、ジャンプといった「基本中の基本の動き」でどのキャラでも出来て当たり前と考えられる操作とします。ではもしこの「どのキャラでも出来て当たり前のことが出来ない」状況が発生した場合、何が起こるでしょうか…?

市販ゲームに「サムライスピリッツ斬紅郎無双剣」というゲームがあります。このゲームでは戦う前に、自分の腕前にあわせて「剣客」「剣豪」「剣聖」の3つのモードを選択できるのですが、その中の「剣聖」モードでは、何とガードを使用することが出来ません。ガードは先ほど書いたように「どのキャラでも出来て当たり前のこと」に位置づけられるもの。そのガードが使用できないということで果たして戦い、特に対人戦が成立するのか、正直疑問に思った事もありました。しかしながら剣聖モードを使いこなす人の動きを見てみると、とにかく攻めて相手に反撃のスキを与えなかったり、甘い起き攻めには武器飛ばし技で割り込んだりと、ガードを必要としない立ち回りで勝ちを積み重ねていました。基本操作の一部が使えなくても戦えるのか…とちょっとした感動を覚えましたが、結局自分は最後まで剣聖モードは使わずじまいでした。

あれからかなりの時を経て、出合った格ツク作品「ぶれいかぁずすぺしゃる」で、再び「出来て当たり前のことが出来ない」衝撃を受けました。本作には「桜葉 圭」というキャラクターがいますが何とこのキャラ、ジャンプすることが出来ません。従って相手の飛び道具をジャンプでかわしたり、投げを読んだ時に空中へ逃げるということが出来ません。最初は「ジャンプできなくてどうやって勝つんだろう」という疑問さえ浮かびました。しかしながら使ってみるとその疑問は瞬く間に解消されていきました。このキャラクターはジャンプが出来ない代わりに、前ダッシュで相手の攻撃をガードできるというメリットがあります。そのため若干のタイミングの慣れは必要ですが、飛び道具に合わせて前ダッシュすればダメージを受けないばかりか、反撃をすることさえ可能です。慣れてくると相手の甘い単発の牽制打撃にも前ダッシュで入り込めます。そしてこのキャラ最大の強みは接近した時のラッシュ力の強さ。接近時のラッシュに特化した必殺技群と突進力で、一度相手に接近すれば一気にKOまで持っていけるほどのラッシュ力があり、この時ばかりは「このキャラにジャンプなんて敢えて必要ない のでは?」と思うほどです。このキャラを使用してCPU戦でエンディングまで到達した時「出来て当たり前のことが出来ないキャラでもここまできちんと戦えるのか…」とかつて感じた感動を再び味わうことになりました。

本作には他にも「神木 晶」というキャラクターがいます。このキャラの場合は必殺技のほとんどに回数制限があるという、前述の圭ほどではないにせよ制約があります。しかしながら回数制限のある必殺技はかなり高性能で、この高性能技をいつ使うか?何を使うか?という、使用回数無制限ではあまり考えなかった戦略も生まれてきます。また本作のCPU戦は終盤はコンティニューが出来ないという進行上の制約もあります。しかしながらコンティニュー不可は終盤(ボーナスステージ扱い)だけであること、負けてもエンディングに到達できることなどが幸いし、コンティニュー不可でもストレスを感じることなく、むしろアーケードゲームをプレイしているような緊張感を味わうことが出来るのでこれはこれでいいかなと思っております。…と今まで特徴的な部分ばかり挙げてきましたが、本作は基本部分も丁寧に作られています。前述までの特徴を持った上で、システムはわかりやすく、キャラ数も多く、何度プレイしても飽きが来ない完成度の高い作品、それが「ぶれいかぁずすぺしゃる」です。

出来ないことがあるならあるなりに動くことで勝機を見出せるキャラクター。ジャンプできないからといって「跳べないキャラはただのキャラだ」と侮っている人がいたのなら、ぜひ圭の壮絶なラッシュをお見舞いしてあげてはいかがでしょうか。
2D格闘ツクールサイト『DIV』トップへ 「格ツク最強理論」トップへ
inserted by FC2 system