「ディジットパーティー制作後記」
RPGツクールMZ初(多分)の長編RPGとして作成・完成させた
「ディジットパーティー〜Melt Zone〜」。制作にあたり思ったことを書かせていただければと思います。
公開開始間際ということでまだ未クリアの方が多い=ネタ晴らしになってしまう点を考慮し、今回は
序盤〜中盤までのゲーム内容についての記述に留めさせていただきます。このイベントは、このキャラは
このダンジョンはどんな意図で作ったのか、それらをお伝えすることで、これからプレイする方や、
これからゲーム制作をする方の何かのヒント・楽しみになれば、幸いに感じます。

0.はじめに…。自由度って何だろう。
1.「1=初」と「普通」なヒロイン。
2.ダブルミーニング。
3.「最初からお前の名前はセンだよ!」
4.ツクールの仕様を突いた仕掛けを。
5.「五感」との互換性。
6.パロディはリスペクトを込めて。
7.聞きなれた「100万」の響き。
8.桁の「ケイ」漢字で書けますか?
9.分かる人に届けばいい…かな?
10.終わりに…。

0.はじめに…。自由度って何だろう。
「選べるけど実は選べない」は極力無くしたかった。
オープニングイベントが終わって、一気に9つのダンジョンの入り口が現れます。
多少の推奨レベル差はあれど、どこから行ってもOKな作りになっています。
実はこれは過去作「干支ランジェパーティー」でも使った手法なのですが、あの時は推奨レベルが
2桁という所もあって「最初から選べるようになってはいるけれどレベル的に厳しくて実は選べない」
という感じでした。この「選べるけど選べない」は極力無くしたかった、純粋に好きな所から
遊んでほしい、という観点から、今回は推奨レベルは最高でも5、しかも一番近いシンボルでは
どのダンジョンでも最弱レベルの敵が出てくれるため、そこで少し戦えば先には進めるバランスに
なっています。後から挑戦するダンジョンは敵が弱すぎて消化試合になりがちですが、
シンボルエンカウントで避けられるので面倒になったらほとんどの敵は避けて大丈夫。ボスも
消化試合にならない、なっても大丈夫なように序盤のダンジョンはボスではなく、通常のザコ敵と
同じ敵が出現する固定敵を配置しました。これで真の意味での「自由度」は上がったかな…と思います。

初期ダンジョンで最も難易度の高いのは「クラスナイン」。戦闘に自信のある人は最初からここに
挑戦しても何とかなるように作りました。
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1.「1=初」と「普通」なヒロイン。
「普通」なヒロインがたまにはいてもいいんじゃないのかな、と考えました。
最初に作り出したダンジョン「初心の家」。数字をモチーフにしたダンジョンを作ろうとしている
初っ端から1と無関係な名前になりそうでしたが、初=1st=1ということでセーフかな、
という感じです。その分ダンジョンギミックで「1」を強調しました。
後半は一転して「十」に関するギミック。十と聞いて真っ先に思い付いたのが「十戒」だったので、
それを上手くゲーム的に落とし込めたかな…と思っています。

「1」の仲間キャラクター・イチカは本作のヒロインポジション。自作品のヒロインというと、
センゴク、ウサミ、アユミといったように児童会長を務める優等生か、ランレッテ、プレストのように
際立って高い能力、または特殊能力を持っているか、はたまたリニティのような最劣等生とか、
「良くも悪くも際立った何か」を持っていることが多かったのですが、今回のイチカはそれは控えめ。
一応音楽を習ってはいるけれど自信は無い…。かといって落ちこぼれでもない。そういう「普通」な
ヒロインがたまにはいてもいいんじゃないのかな、と考えました。今回は主人公・レイレイを推す
スタイルでもあるのでこれくらいの薄味ヒロインがちょうどいいかもしれないぞ…とも。

優等生でない分、不完全である敵役にも同情しちゃう気持ちもより強い。そんな心優しいイチカを
気に入っていただけたら幸いです。
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2.ダブルミーニング。
当初はもっとシビアな時間設定だったのですが。
「セカンド」は2という意味の他に「秒」という意味もあるので「セカンド・ヘブン」には秒を争う
仕掛けを用意しようと考えました。当初はもっとシビアな時間設定だったのですが、それだと
アクションが苦手な人は詰んでしまうので、からくりが分かれば余裕で間に合う時間設定にしました。
後半は「百」に関するギミック。100と言えば「100人に聞きました」が真っ先に浮かんだので
これを中心に組み立てていきました。最初は「クイズ百点満点」的なものも入れようと思いましたが
上手いギミックが思いつかずこれはお蔵入りに(第3フロアに実装する予定でした)。

「2」の仲間キャラ・ニノはこれでもかと言うくらいクセの強いキャラ。上から目線で一人称はオレ様、
話口調もメチャクチャで何にも考えずにモノを言ってそうなキャラですが、このキャラのセリフには
不思議と苦労せず、ああ自分はこういうキャラを創るのが得意なのか…とも思ったりしています。
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3.「最初からお前の名前はセンだよ!」
「残念なりに頑張ってるんだよ」というメッセージをどうしても送りたかった。
学校から一番近いダンジョンの入り口で、推奨レベルも低いので、最初に訪れる方も多いと思われる
「さわやか山道」。当初は「さわやか3組」という感じで学校内に入り口がある案もありました。
(小学校に3階へ登る階段があるのに、行けそうで行けるようにならないのはその名残です)
後半のモチーフは「千」。千と言えば真っ先に浮かんだのが某超有名映画で、これをネタにするのには
最初は抵抗があったのですが、後述もしますがリスペクトがあればOK!…という勢いで実装しました。

キャラとしては「3」のサンタも要注目なのですが、さらに注目してほしいのはボスキャラのセン。
頑張って変わろうとしても「そうじゃない」的な変わり方だったり、悪気は全くないんだけれど
どうにも間が悪い…、いわゆる「残念な人」というのは自分も含めてどうしてもいると思います。
でもその「残念な人」にも言い分があって「残念なりに頑張ってるんだよ」というメッセージを
どうしても送りたかった。それでこのシナリオ・このキャラを描きました。この手の人たちは
「頑張れば頑張るほどダメ」という泥沼にハマることも少なくないのですが、そこはゲームなので
最終的には救われて欲しいという観点から、ちょっとサンタとくっつけてみました。
ゲーム内でのセンはとても「残念な人」とは思えない器量を見せ、戦闘でもかなり強いですが。

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4.ツクールの仕様を突いた仕掛けを。
ツクールユーザーさんに「上手い!」と言ってもらえるようなダンジョンも。
四民鉄道はツクールMZで新搭載されたレイヤー機能を利用することで非常に作りやすくなった
「見えない迷路」をメインに据えてみました。鉄道だけに当初は第1フロアに出てきた線路系の
ギミック中心で行く予定だったのですが、作ってみるとこれが意外と面白い。後半に出てくる
テーブル越しだと1マス離れたアイテムも取れる仕様もそうですが、上手く利用することで
ツクールユーザーさんに「上手い!」と言ってもらえるようなダンジョンも欲しいなと思いました。

キャラ的には、これまで女の子が多かったまとめ役ポジションに初めて男の子キャラとして座った
ヨシタカ。典型的な学級委員タイプだけどアツい時はアツい、そんなキャラを目指しました。
対称的に典型的な非道徳キャラであるBLACK STAR 万との掛け合いにも注目です。あとは初出から8年、
SUPER STAR 万に初めて顔グラフィックが付いたのでもっと出番があっても良かったかもしれません。

SUPER STAR 万の初登場は2012年「タイムパーティー」から。「ユニバーサル・ツクール・ジャパン」など
割とチョイ役で登場はしていましたが、顔グラフィックが付くのは今回は初です。
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5.「五感」との互換性。
ゲームって意外と五感との互換性が無いなあと、作ってから気付きました。
五感を使ったギミックを「5」をモチーフにしたダンジョンに入れようというのを最初に決めて、
ところがいざ作ってみると難しい。ゲームって味覚を刺激する味もしなければ嗅覚を刺激する
臭いも出さないですからね。作ってからああこれは大変だなと気付きました。
聴覚エリアは最初、本当に音だけでメッセージは入れない予定でした。でもツクールMZ作品は
(一応本作はPCでのプレイ推奨になってはいるけれど)スマホでのプレイをする方もいるし、
そうなると通勤電車の中のような音の出せない場所でプレイする方もいる。そういった時に困る、
ということで音が出る通路にはメッセージを出すという救済措置を入れました。
そういう意味も含めて、ゲームって意外と五感との互換性が無いなあと、作ってから気付きました。

ダンジョン的には格付けチェック→大奥→研究所→廃棄場と目まぐるしく場面が変わるのが特徴。
凝ったギミックは前半エリアで全て使ってしまったので後半エリアは単純に広いダンジョンという
感じで、その点ではある意味一番オーソドックスなRPGっぽいダンジョンになったかもしれません。
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6.パロディはリスペクトを込めて。
楽しく取り入れつつも、尊敬の念を忘れないようにしました。
開発中ではここのボスに当たる「兆さん」の桁(兆)が「彼ら」の中で一番大きな桁になる予定でした。
後述の理由により最も大きい桁は兆の1つ上の「京」になりましたが、当初の設定もあり、
「彼ら」のリーダー的存在としてのポジションに座っていただくことになりました。
前半の六道神社の不気味さから一転してコントの舞台へ。ゲーム的に落とし込むのに苦労しましたが、
楽しく取り入れつつも、尊敬の念を忘れないようにしました。自分の幼少期に楽しんだコント番組、
当時あれだけ無茶な事をしながらよく事故で打ち切りにならなかったな…と関心もしたのでその手の
セリフ、およびそれにちなんだギミックも仕込んであります。

「6」の仲間キャラ・ロック。とりあえず「小学生が忍者みたいな恰好はしない」というツッコミは
無しの方向で…。「干支ランジェパーティー2」に登場したメイの弟という設定です。メイの家族は
いつか出そうと思っていたので、ちょうどいい機会だなと思っていました。実際作ってみると
メイにも出番があるので意外とロックの影は薄くなってしまったかもしれません。仲間キャラで唯一の
闇属性使い。最初「忍殺」は即死判定がありましたが強すぎかな…ということで弱体化しました。
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7.聞きなれた「100万」の響き。
ギミックもセリフもキャラも、とにかく遊び倒そうという意気込みでした。
実は一番ノリノリで作れたのが「エンゼルセブン」だったりします。クイズ好きの自分が見ていた
「100万円クイズハンター」「クイズ世界はSHOBYショーバイ」「クイズ・ミリオネア」…などなど
クイズ番組と100万(円)というのはかなり密接な結びつきがあったように感じたので、ここは
往年のクイズ番組ネタを大放出しようと。また英語の桁名としてはミリオンはかなりメジャーなので
ちょっと小生意気だけど、今どきの人気ユーキューバーという立ち位置のキャラを作りました。
最初のスロットに始まり、パズル的・クイズ的な要素などギミックも多彩。そして合間に入るセリフも
掛け合うキャラも勢いでガンガン作っていけました。ギミックもセリフもキャラも、とにかく
遊び倒そうという意気込みでした。プレイヤーの皆様もぜひ楽しく遊び倒して頂けたら嬉しいです。

作り終わってみれば全キャラ屈指の濃いキャラとなったナナ。彼女の兄・ナヅキは格闘ゲーム
カレンダーパーティーシリーズのキャラで実に10年ぶりの再登場となるキャラクター。
本作では影が薄いですが、カレパシリーズ(18歳)に登場するちょっと前の彼が描かれています。
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8.桁の「ケイ」漢字で書けますか?
急遽登板となった「京(ケイ)」をどう扱うかで迷いました。
前述の通り当初は、「彼ら(ネタばれになるので敢えてこう呼びます)」の桁の中で一番大きいのは
「兆」で、残る3つは英語の桁から取ることにしていました。ところがミリオン(100万)と
ビリオン(10億)はともかく、他の割とメジャーな桁名はいずれも日本語の桁と大きさが被る。
(候補に上がったトリリオンは1兆でした)できれば同じ大きさの桁のキャラは作りたくなかったので
仕方なく兆の1つ上「京(ケイ)」を使う事に。確か小学校で習うのは兆までと記憶していたので
割とマイナーなイメージのある「京」にちゃんと桁のイメージ持ってもらえるか心配でした。そして
急遽登板となった「京(ケイ)」をどう扱うかで迷いました。最初はハッチの姉をケイという名前にし、
ボスに仕立てることも考えましたが、なかなか上手く話の組み立てが出来ず、それならば同じ名前で
そのケイに嫉妬するもう一人のケイを作ろうか、という形になりました。結果として「主要メンバーの
姉の友だち」というちょっとややこしい立ち位置の中ボスが産まれましたが、シナリオはわりとすんなり
書けた気がします。ダンジョンギミックも特に後半は迷わず作れました。

キャラ設定はかなり後の方だった割に、登場は他のキャラより先んじて登場のニア・ケイ。
ライバル的存在が必ずしも全員同列の登場でないのは「干支ランジェパーティー」と同じ手法です。
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9.分かる人に届けばいい…かな?
やりたいならやっちゃえよ、という自分の気持ちに正直になったシナリオです。
エンゼルセブンに次いでノリノリの勢いで作った世界がクラスナイン。あちらがテレビ番組ネタなら、
こちらは往年の昭和時代のファミコンアドベンチャーゲームをリスペクトしたネタで攻めました。
お若い方には何のこっちゃと思われるかもしれませんが、分かる人に届けばいい…かな?という感じ、
やりたいならやっちゃえよ、という自分の気持ちに正直になったシナリオです。

とはいえそれだけではさすがに置いてけぼり感がすごいので、元ネタを知らない人でもしっかり面白い
ちょっと頭を使う仕掛けを用意させていただきました。テストプレイの時点でも割とここが好評で、
RPGにもやっぱり謎解き要素があっていいんだなと再確認できた部分でもあります。
狭いエリアに敵が密集していたり、唯一船で移動するポイントがあったり、サブイベントのボスが
やたらに強かったりと、他の世界と比べても特徴的なポイントが多く、推奨レベルも高めなので
最後に手を付けるか、逆に腕に自信があるなら敢えて最初に挑戦してみるのも面白いかもしれません。
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10.終わりに…。
「この作者楽しんで作ってるなあ…」という面を感じ取って頂けたら幸いです。
この作品の制作に当たってまず心掛けたのは「ゲーム制作そのものを遊ぶ」事。17日の記事でも
書かせていただきましたが、本作品は「RPGツクールMZ製初の長編作品を目指す」ことと「MZ発売から
100日で完成させる」ことを狙いました。正直言ってこの2つ、クオリティには全く関係ありません。
では何故そんなことを意識したかと言えば「その方がツクっていて楽しい」から。
自分は25年以上ツクールでのゲーム制作を続けていますが「ツクールは遊び」という意識は続けています。
「制作は遊びじゃない。もっとマジメに作ってほしい」という意見もあるのは承知の上ですが、反対に
自分としては「『遊び』であることを忘れたツクール制作って苦痛・苦行」だと思っています。
本作をプレイする中で「この作者楽しんで作ってるなあ…」という面を感じ取って頂けたら幸いです。

そして本作は「数」や「桁」をモチーフにしたネタを満載にする一方で「クリエイティブ」をテーマに物語が
進んでいきます。人権意識の高まりや昨今の不安定な情勢も反映してか「自由にツクる」が少しばかり
難しくなってきたような気がします。今回はそんな「自由に創ることの難しさ」をストーリーにも反映し
「クリエイティブ」は何処へ向かうのか、未来はどうなるのか、そういったことを自分なりに考えて
まとめています。もちろん規制は大切。特に何かと暴走しやすい、明らかに一線を超えてしまうような
モノを作り出してしまう方も増えてきている今の時代には特に感じます。でもそれで、本当なら許される
範囲のパロディネタや面白いアイデアまで葬られてしまうのは何だかとても勿体ないように思うのです。
そういう意味も含めて、割と肩の力を抜いて作ってはいますが「自分の考える、良い事と悪い事の基準は
まだ腐っていないぞ!」という気合も込めて、この時代に敢えて「ネタ」に走った作品を公開しました。
長編なのでお気軽に触れてほしいというのは言いにくいですが、この年末年始、ぜひプレイしていただき、
「何かと規制が厳しい中でも許される範囲内のパロディネタ」として評価するに値するかどうか、
プレイヤーの皆様にジャッジしていただきたいと思うのです。

「クリエイティブ」は「遊び」として受け入れられるのか、それとも…?
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本記事の題材になった作品「ディジットパーティー」興味がありましたらぜひプレイしてみてください!
↑ブラウザ版はこちらから!

ダウンロード版はこちらから。お好きなスタイルでプレイ可能です。

このページ先頭に戻ります。

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